30年前、粗大ごみに出す古い箪笥の引出しの裏に、墨で俳句が書かれていたのを思い出した。
戦前戦中、家は建具屋をしていたので大勢の職人さんが住み込みで働いていたが、若い職人はみんな兵隊にとられた。
その一人が書いたのだろう。
生きて戻りたいおもいを。
うちの家では戦争映画はみない。
母の父は高射砲で目を傷つけ、終戦後両腕を失くした少尉と日本に戻った。
父の父は硫黄島近海で戦死。
祖母の兄はビルマで戦死した。
南方の激戦地や、シベリヤから戻った近所のおじさんたちはもういない…。
複雑な気持ちでA氏を眺めた・・・。